たかが歯の疾患、されど歯の疾患
実話です
私の父は小児科の医師でした。(今年2012年逝去)
私が開業して数年後、父(当時60歳くらい)が突然私に「歯の調子を診てくれ」と言ってきました。
私は大変驚きました、そもそも出来の悪かった不詳の息子の私に自分の口の中を診て欲しいなんて事を言うはずが無いと思っていたからです。
よほど調子悪かったのでしょうね、恐る恐る口の中を診査した私は、「それほど虫歯ですぐに治療しなくてはいけない歯は無さそうだが、上の親知らずは抜いておくべきだろうね」と告げました。
実は私の父は20代の頃から蓄膿症に悩まされており、それが原因で勉強に身が入らない時や集中力が続かないなどの悩みを持っていたのです。
それを知ってはいましたが、既に二度も大学病院の耳鼻科で蓄膿症の手術を行っており、それ以上の事を私がすることもなかろうと私は思っていたのです。
私がその親知らずを「コンコン」とピンセットで軽く叩いたり、揺らしたりすると、「その歯がむずがゆく、押されると楽になる」と答えたので、炎症があるだろう事は充分分かったので、「少なくとも抜くほうが体のためだと思うよ」と告げたのです。父はそう言われるや否や「抜いてくれ」と即答し、早速抜歯となりました。
幸い、いとも簡単に抜歯は終了し、後日傷口の洗浄に訪れたときに父が言った言葉がこの表題なのです。
「わしは40年も蓄膿症に苦しみ、手術も受けてきた、なんと無駄な年月を過ごしてきたことか・・・、歯医者は必要だ、医者には分からなかった、大学病院ですらこの歯を抜くことを勧めもしなかった、今人生で一番すがすがしい気分だ」とこう続けて言いました。
そうです、40年苦しみ続けた蓄膿症が、一本の不要な親知らずを抜いたことでものの見事に完治してしまったのです。(二度の大学病院での手術は一体なんだったのか?)
歯周病や智歯周囲炎などは感染症です。
つまり、手のひらや顔などに化膿して膿をもった部分などがあったら、皆さん必ず病院で治療を受けるはずです。
ところが口の中だと意外にも放っておく人が日本人には多いんですね。
そんな放置した状態が大げさに言えば人生の貴重な時間を無駄に過ごすことにもつながるという貴重な体験でした。
たかが歯の疾患、されど歯の疾患
気をつけてください。
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